本記事では、銀行員と公務員の仕事内容に加え「どのような方が向いているのか」を解説します。
また人生において重要視される給与・結婚・転職の3つのカテゴリで、銀行員と公務員どちらが有利なのか徹底比較していきますので、ぜひご一読くださいませ。
銀行員と公務員の違いは?
銀行員と公務員は「エリートな職業」「収入が安定している」など、共通するイメージが多いですよね。
実際、「銀行員」とGoogle検索をすると関連するキーワードとして「公務員」が出てくるので、多くの人が「似ている」もしくは「同じカテゴリ」と思っていると言えるでしょう。
銀行員は個人のお客様や企業をサポートし、公務員は国を通して国民や地域住民をサポートするといった「人」に関わる点でも似ていますが、サポートの仕方に違いがあるのです。
次項では、それぞれの仕事内容について詳しく解説していきます。
銀行員の仕事
銀行員の仕事には、大きく分けて個人に対しておこなう「個人営業」と、法人に対しておこなう「法人営業」の2つがあります。
個人営業は、店舗の窓口でお客様の預金の手続きや、個人宅を訪問して資産運用の提案などが主な仕事です。
一方、法人営業は企業の経営者層と商談をおこない、融資の提案や経営のコンサルティングなどをおこないます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
個人営業|預金や資産運用を提案する
個人営業の目的は、お客様のライフプランに沿った資産運用を提案することです。
マイホームのローンや老後のための投資信託など、銀行の商材を活用してお客様(個人)の資産運用をサポートしていきます。
日々のコミュニケーションや提案内容のわかりやすさ、寄り添う姿勢など、お客様から信頼を得ることが成約に繋がり、やりがいでもあるのが個人営業です。
受注した際には、自分の仕事がお客様から「認められた」と実感でき、銀行業務を通じてお客様一人ひとりの生活をより充実させるお手伝いができます。
法人営業|融資や経営の相談役をおこなう
法人営業の目的は、金融サービスを通じて企業の経営や事業の支援をおこなうことです。
企業のキャッシュフローや資産状況、担保などを総合的に確認し、貸付が適切かどうかの評価をおこないます。
貸し付けた場合の回収は確実にやるべきことであり、銀行員には他にも金融の専門家として企業の課題やニーズを引き出し、共に企業成長を目指すのも使命です。
企業の成長は、お客様に喜ばれるだけでなく、地域活性化や経済活動の活発化など社会貢献にも繋がります。
公務員の仕事
公務員は、国に勤務する「国家公務員」と、地方自治体に勤務する「地方公務員」の2つにわかれます。
どちらも憲法の定める奉仕者として勤務することが求められていますが、国家公務員と地方公務員では業務内容に違いがあります。
国家公務員|法案の作成や政治家と国民の窓口となる
全国に約58.5万人いる国家公務員は、各省庁や関連機関などが管轄する国の公務・日本全体を支える業務を担います。
政策の企画・立案・調査や法律の制定・改廃など、幅広い知識や考察が求められる分、世の中に影響を与えるような業務に携われるやりがいのある仕事です。
地方公務員|自治体として住民のために勤務する
全国に約274万人いる地方公務員は、都道府県や市区町村の自治体で住民を支える以下のような業務に従事しています。
- 戸籍・住民票に関する業務
- 市町村道路・公園・緑地の管理
- 一般廃棄物処理・リサイクル活動
- 火災予防活動・救助活動
地方公務員は国家公務員より、直接住民と関わる機会が多くなります。
また、地方公務員は平均2〜3年で部署異動がおこなわれるため、専門性の高い国家公務員に比べ、さまざまな分野の仕事を経験することも可能です。
住民の生活を近くで感じ、直接携わることで、自分の仕事がダイレクトに住民の笑顔や声として返ってくるのでやりがいに繋がります。
銀行員向き「経験を積みスキルアップしていきたい挑戦思考の人」
銀行員は大きなノルマを常に任せられます。
達成のために「仕事の進め方」や「個人・経営者へのアプローチ方法」など、自身で考え行動できる人が向いているでしょう。
また、金融知識の定着には資格取得が必要不可欠であり、他にも昇格・昇進のためにさまざまなスキルアップを常に求められる職業でもあります。
営業活動のように「結果にコミットしたい人」や資格取得のように「得た知識を仕事に活かしたい人」など、挑戦しスキルアップを望む人は銀行員向きです。
公務員向き「規則に沿って事務作業がしたい安定思考の人」
公務員は、国や自治体のために働くため、銀行員と違って銀行のための利益追求をしません。
そのため銀行員のようなノルマ制ではなく、規則に従った業務遂行を求められます。
また、公務員は民間企業と比べて福利厚生がしっかりしているため、ワークライフバランスを重視する人におすすめです。
銀行員と公務員どっちが「給与・結婚・転職」に有利?
銀行員と公務員の仕事内容を把握できたところで、2つの仕事に就くと受けられる恩恵や影響も気になりますよね。
本項では、多くの人が就職の際に気になる以下3つについて比較していきます。
- 給与
- 結婚
- 転職
【給与】銀行員のほうが昇給する機会が多い
年齢 | 銀行員 | 年齢 | 公務員 |
20~24 | 223,500円 | 20~23 | 228,037円 |
25~29 | 268,400円 | 24~27 | 273,317円 |
30~34 | 331,600円 | 28~31 | 309,239円 |
35~39 | 395,600円 | 32~35 | 345,889円 |
40~44 | 431,100円 | 36~39 | 389,657円 |
45~49 | 460,500円 | 40~43 | 433,937円 |
50~54 | 484,300円 | 44~47 | 460,949円 |
55~59 | 453,700円 | 48~51 | 479,952円 |
60~64 | 331,200円 | 52~55 | 496,050円 |
65~69 | 323,300円 | 56〜59 | 506,425円 |
銀行員と公務員の給与年収を年代別で比較してみるとさほど変わりはありません。
ただ、銀行員は個人や支店の実績による昇進や昇給があるので、頑張り次第で年収を上げられます。
一方、公務員は出来高制ではないので、毎月の給与が変わることはほぼありません。しかし「亀の甲より年の功」というように年上を立てる風潮から50代半ばを過ぎても年収は上がり続けています。
若くして「キャリアを積みたい」「稼ぎたい」というなら銀行員。
「決められたお給料の中でやりくりしたい」「長く働き続けたい」というなら公務員がよいのではないでしょうか。
参照:国税庁「賃金構造基本統計調査」総務省「地方公務員給与実態調査」
※21年度 全地方公共団体一般行政職の給与所得
※21年度 金融業・保険業の給与所得
【結婚】どちらも将来性があり好まれる
一般的に「銀行員は高収入」「公務員は安定した職」というイメージがあるため、結婚の際には好まれやすい職業です。
どちらも社会的信用性の高い職業であり、福利厚生も充実しているので「周りの人から信用されやすい」「ライフプランを立てやすい」というメリットがあります。
しかし近年、銀行ではAIを導入し業務の効率化や人件費削減などに取り組んでいるため「今後AIに奪われる職業」とも言われています。
銀行内でも事務作業のようなAI化しやすい部署の将来性は薄くなる可能性が高いでしょう。
【転職】銀行員のほうが金融知識や営業スキルを活かしやすい
銀行員は業務上必須なものやスキルアップのために、お金に関する資格取得に励んでおり知識が豊富です。
培った金融知識や営業スキルは、同じ金融業界や経理財務職、経営コンサルタント業など他の職種・業種にも重宝されます。
一方(地方)公務員は住民の要望・苦情から行政に求められていることを考え、住民が暮らしやすい環境をつくる特殊な職業です。
そのため、転職時には民間企業とマッチする点を見つけにくいことが懸念されます。
銀行員と公務員の共通点
銀行員と公務員は、仕事内容や第三者からの需要など違う部分も多いですが、大きな共通点として「社会的信用性」と「職場の上下関係」について詳しく解説します。
特に「職場の人間関係」はデメリット要素が強いため把握しておきましょう。就職前から知っておくことで、事前の対策や気持ちの準備もできます。
周囲の人からの社会的信用性が高い
銀行員はお金を扱う仕事、公務員は行政や環境を整える仕事をしており、どちらも私たちの生活になくてはならない重要な存在です。
そのため就職するには一定の教養や学歴はもちろん、信用性も問われ、実際に信用・信頼できる人格を持った人が職に就いています。
初対面の人でも信頼されやすく、仕事の場面に限らずプライベートでも円滑な人間関係を築ける人が多い印象です。
一方で、始めから信用性が高いためマイナスな言動をしてしまうと、悪い意味で周りにギャップを感じさせてしまいます。
イメージを崩さないよう気を付けながら生活することに窮屈さを感じる人も少なくありません。
職場の上下関係が厳しい
銀行員と公務員は、上下関係の厳しい職場として知られており、古風な風潮や体育会系の関係についていけず辞めてしまう人もいます。
また、ブラック要素の強い職場も一定数あり、職場の飲み会へは半強制参加であったり、上司への異様な気遣いを迫られることも少なくありません。
節度ある上下関係は大切ですが「上司に絶対服従」「ハラスメント」は問題です。
そのような目に遭わないためにも普段から、大学のサークルやアルバイトなどで人を見る目・コミュニケーション能力を養っておきましょう。
【体験談】銀行員・公務員に就職した人に聞いてみた
筆者は元銀行員なので、知り合いに前職の同僚も多く、未だに銀行員の良い話も悪い話も聞きます。
また、公務員の友人からも「愚痴」を聞く機会は多く、嫌になるときもあるようです...
本項では、銀行員と公務員に就職した人の実際の声をご紹介します。
銀行員に就職した20代前半/女性
私が働いていた店舗では、始業は8時45分なのに、新入行員は8時前出勤が当たり前。店舗の掃除や準備をしますが、ボランティアでお金は発生しません。
出世のための資格の勉強も必須で、プライベートの時間を削らなきゃいけないので、自分の時間を確保しづらいですね。
個人的には、ノルマを達成するために数字を追いかけ続ける日々がストレスです...
締め日が近づくと自分だけじゃなくて支店全体がピリピリとしていて職場にいるだけで気持ちが沈んでいくんです。
ノルマを達成やお客様からの感謝の言葉は気持ちいいですが、それまでの道のりはいつも長く感じます。
20代のうちに銀行員を辞めて転職していく同僚も多く、最近は取り残される気分になることが増えてきました。
公務員に就職した20代後半/男性
公務員は配属先によって忙しさが全く違います。自分が配属された生活保護課は、多忙かつツラい経験も多く、ストレスが半端じゃないです。
忙しいときに残業しても全てが残業代として反映されるわけではないので、割に合わないと感じることも多いですね。
仕事自体は難しくないのですが、窓口に来た人によくわからないことを言われ、怒鳴られる日々...
職場内でも権力を持つ上司の機嫌を伺ったり、多すぎる飲み会に強制参加させられたりと心身ともに擦り減ることが多いので、病んでしまう同僚もいます。
銀行員と公務員についてよくある質問
銀行員または公務員への就職を考えている人向けによくある質問をまとめました。
仕事の時間は、一般的に週5日1日8時間と人生の中でも関わりの深いものです。就職後に「思っていたのと違う」と後悔しないようしっかり知っておきましょう。
銀行員または公務員になるには?
銀行員は、一般的な民間企業と同じように、銀行の採用試験を受けて内定をもらう必要があります。
新卒採用は基本的に「一般職」と「総合職」に分かれており、一般的に大学・短大を卒業し新卒で入行試験に合格するルートが主流です。
一般職や事務職の採用などは、専門学校卒や高卒からのエントリーも可能な場合があります。
公務員は、公務員試験に合格する必要があり、教養試験の他に面接や論文もあるのが一般的です。
教養試験は、範囲がかなり広く苦戦しますが、計画的に勉強を進め対策をとれば問題ありません。
また「特別職」と呼ばれる裁判官や検察官は司法試験への合格が必須になります。
銀行員から公務員に転職する人も多い?
銀行員から公務員に転職する人はかなり多い一方で、公務員から銀行員に転職する人は少なめです。
銀行員だからといって公務員試験が有利に働くことはありませんが、銀行員時代の経験から数字に強い一面があるので、公務員業務も容易に感じることは少なくありません。
銀行員のようにノルマに追われることもなく「社会的信用性」を保つことができる公務員は、銀行員の転職先として最適だと考える人もいます。
まとめ|銀行員は挑戦思考向き・公務員は安定思考向き
銀行員と公務員は、共に社会的信用性が高く評判の良い職業ですが、業務内容は異なります。
銀行員は、ノルマを追いかけて成功を狙う挑戦思考向きであり、公務員は任された任務を確実に遂行する安定思考向きと言えるでしょう。
ただ、銀行員はノルマ達成のため「数字に追われるストレス」や「公務員は配属先によって激務を強いられる」という、どちらも気を付けておきたい要素があります。
また、どちらも未だに、古風な考えや人間関係の厳しさが残っている職場なので、万が一のときは「相談」や「転職」を考えられるようにしておきましょう。
Webライター/シナリオライター。本業の営業経験を活かしながら、副業でWebライターや動画シナリオライターとしても活動中